パットマンⅩの 遊星より愛をこめて

桑田のユニフォーム姿、良いね!

ピート・ローズの脳裏に焼き付いた日本野球

1978年のオフ、シンシナティ・レッズを迎えて日米野球が開催されました。レッズは1975、76年と2年連続でワールド・シリーズを制したMLB史上屈指のチーム。そのチームを相手に日本側がどんな戦いを見せるのか、当時高校生だった僕は多大な興味を持ってテレビ観戦したものです。

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来日メンバーは、その年に3,000本安打を達成したピート・ローズ、16勝を挙げたエース、トム・シーバー、史上最高捕手との呼び声が高かったジョニー・ベンチ、3年連続打点王ジョージ・フォスターなどの豪華な布陣。

第1戦の相手は巨人。そのシーズンにブレークした中畑清サヨナラ本塁打を放ち日本側の先勝。良い試合をしてくれたので「日本も中々やるな」と、大いに留飲を下げたものでした。ところが試合を重ねるにつれて調子を上げたレッズは、第6戦からは無傷の12連勝。結果的には日本側の2勝14敗1分けという惨憺たる成績に終わったのです。

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観ていて痛感したのは、日本の狭い球場で試合をしたのでは彼らのパワーにはとても太刀打ちできない、ということでした。メジャーリーグの球場は両翼100メートル、センター122~123メートルあるのが普通です。それに対して日本は両翼90メートルが標準、センターは120メートルない所も多く、当時の広島市民球場は115メートルという狭さ。まさに鳥かごのような球場で試合をしていたのです(巨人の本拠地・後楽園球場の両翼は、何と87メートル!@@;)。

レッズ側にしてみれば、ただの外野フライが日本ではホームランになってしまうんですから、こんなに美味しい話はありません。「あれあれ、日本ではこれがホームランになってしまうのかい?」と、心の中では大笑いしていたことでしょう。誰の発言かは覚えていませんが、「フォスターが日本で1シーズンプレーしたら70本打つんじゃないか」とまで言われたものでした。ジョージ・フォスターはその年、メジャーで40本塁打を記録しています。

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フォースターって・・・^_^; ベエンチって・・・^_^;

この日米戦、とりわけジョニー・ベンチが絶好調で、計17試合で9ホーマーを放ち、文句なしの「ホームラン王」になりました。本国では年間20本がやっとの選手が、日本では17試合で9本です。前年にハンク・アーロンを抜いて756号の”世界記録”を打ち立てた王貞治のホームラン記録が、果たして彼らの目にはどう映ったんでしょうね?

そこで、ピート・ローズの話です。イチローの通算安打記録に難癖をつけて男を下げまくっていますけど、ローズにはこの年の日米野球のイメージが強烈に残っているのではないでしょうか。鳥かごのような狭い球場で試合をし、低いレベルの投手を相手に記録した安打数まで加えられ、自分の記録と比較されては堪らない、という正直な気持ち。僕にはとてもよく分かるんです。

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ヘッドスライディングがトレードマークだった”チャーリー・ハッスル

素直に「イチローこそ№1だ。おめでとう!」と讃えていれば自分の株も上がる、という単純な事実に気が付かないKY(もう死語かな?)なジジイであるのは確かですけど、敢えてそれを言わせない当時の日本の野球こそが、イチローの記録を最も貶めているのではないでしょうか。悪いのはローズじゃありません。

今回のイチローの記録を機に「日本の野球は必ずしもメジャーの下に位置するのではない」という論調も目立ちますが、いや、明らかに下ですから^_^; 殊更に卑下する必要はありませんけど、殊更にアゲアゲするのも考えものです。

僕はイチローの大ファンです。子供の時は王の大ファン、大人になってからはイチローの信奉者。メジャーに行って一時期不調になり、安打が20打席も出なかった時には胃が痛くなりました。近い将来の3,000安打達成時には涙が出ることでしょう。でも、「4,257安打! ピート・ローズを抜いたァ!」というアナウンサーの叫び声には決して同調いたしません。メジャーにはメジャーの、日本には日本の記録がある。それだけのことです。もし松井秀喜がメジャーでホームラン王になり、青木宣親がメジャーで首位打者になっていたら、僕の認識もかなり違っていたでしょうけど。メジャーで1シーズンに7本塁打しか打てなかったバレンティンが、日本では60本打ってしまう。これが現実なんです。そして、この逆のパターンは絶対にありません。

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3,000安打達成の時が待ち遠しい♪

それにしても、改めて思うのはメジャーリーグの懐の広さです。イチローの通算4,257本目の時にも電光掲示板で記録を讃え、球場のファンもスタンディングオベーション。もし日本で韓国の選手が日韓通算で張本の3,085本を抜いたとしても、ほとんど話題にならない筈。まあ、それもメジャーだけで3,000本を記録するイチローだからの話。稀代の天才打者は、これからも日米双方のファンを存分に楽しませてくれるでしょう♪