パットマンⅩの 遊星より愛をこめて

桑田のユニフォーム姿、良いね!

ツンデレ じゃないツンドクだけのキット 嵐の昼下がり編

あれは彼是3年程前のことでしょうか。
ある穏やかな秋の午後のことでした。

ツンドクだけのキットがそろそろ目立ち始めていた部屋の中で、Xは何故か一念発起したのです。
「そうだ、このキットたちを少しずつでも減らしていこう。」
止せばいいのに、そんなことを考えてしまったのです。

といっても本当に高度な技術を必要とするガレージキットにはとても怖くて手が出せません。
そんなときに偶々手元にあったのが届いたばかりのビリケン商会彩色済みウルトラマンBタイプでした。

その頃発売されたスペシウム光線のポーズのキットです。
彩色済みですから組み立てるだけで完成する。そういうフレコミでした。
「これだ!」

愚かなXは、そう思い込んでしまったのです。後に来る惨劇など想像もせずに…。
早速パッケージを開けて中を確認し説明書を見ます。
そうすると組み立てるだけとはいっても、結構難しそうなカットなどが必要になるようです。
特に背中の赤いラインに沿ってカットするところなど、素人には難易度が高いのでは?
などと不安になり始めました。

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しかしそこは一念発起したばかりですので、容易なことでは諦めません。
説明書の通りパーツをドライヤーで十分に温め、カットの準備をします。
でもそこは素人。どの程度温めればスムーズにカットできるのか確固とした経験がありません。
そこで「まあ、こんなもんだろう」と思う程度の温め加減でドライヤーから手を離し、
刃先の鋭いカッターを握りました。素手のままで。今考えれば何故軍手をしなかったのでしょう。
ちょっとの準備で惨劇を避けることが出来たのに…。

半ばどきどきしながらカッターの刃を進めて行きます。
部屋には午後の暖かな陽射しが射し込んでいます。Xはルンルン気分で作業を進めました。
「たまにはこんな時間があってもいい。いい日だ♪」(宮崎あおい風に)

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パーツは思うように綺麗には切れません。でもそこは素人だから仕方がないと自分を慰めます。
段々温めた部分の熱が冷めて硬くなってきました。
「硬いな」と思った途端に思わずカッターを握る右手に力が入り、反動で「シャッ!」と
目にも留まらぬ速さで刃が左手手首の辺りに飛んだと感じた刹那、直感的に「ヤバイ…」と。

瞬間、痛みよりも先に親指の付け根がザックリ裂けたのが目に入りました。
と同時に大出血。その時初めて酷い痛みが。痛い筈です。白い腱が見えていたのですから。

元々血に弱いXは「ヒエエエ~~~!」と大パニック。今にも気を失いそうです。
左腕を心臓から上に上げても全く出血の勢いは止まりません。

どうしようか?と瞬時に考えます。車で病院に行く?「駄目だ、マニュアル車だ。」
そうです、Xはマニュアル派なのでした。激痛に耐え腱の見えた左手からダラダラ血を流しながら
車を運転するのはまず不可能です。オートマですら覚束ないのに。
そんな無理をして致命傷にでもなったらえらいことです。

とするとどうするか?タクシー?いや、タクシーでも不安だ。第一病院の場所がすぐ分かるかどうか。
「やっぱり救急車だ。」と迷いなく119番に通報しました。

約5分で救急車は到着しました。当事住んでいたマンションの出口まで出て救急車を
待ち侘びていたXを見て、救急隊員たちが少し拍子抜けした顔をしたのを何となく感じました。
重症患者を運ぶのを常とする救急隊員から見れば、手首から血を流しているだけのおっさんは
救急車で運ぶに値しないと感じたのかもしれません。

しかしですよ、真っ青になって血をダラダラ流しながらそれでも自力で病院へ行けというのでしょうか。
救急車で応急措置をしてもらいながら病院に行きたいというのがXの希望だったのです。

病院には間もなく着きました。救急入り口では看護婦さんたちが待ってくれていました。
どれだけ心強く感じたことか。地獄で仏とはこのことです。
車を降りて診察室に直行。自力で歩いているXを見て看護婦さんたちはのんびりムード。
悲壮な顔をしてるのはX一人です。相変わらず左手に激痛が走ります。

診察室のベッドに横になり、ようやく医者に診てもらいました。
傷口を初めて見た看護婦たち、何て言ったと思います?
「やっだー、白い腱が見えてるー。キャハハー♪」だって。何なんだ、ここの看護婦どもは~!
いやいや、看護婦どもなんて言っちゃいけません。まじめな看護士さんたちです、はい。

医者の言葉などは全く覚えてません。ただ糸で縫われるのだけは感覚的に分かりました。
自分の体の一部が針と糸で縫われるなど、怖くて見てられなかったのです。

こんなふうにして、穏やかな秋の一日は終わりました。でもこれには後日談があります。

一週間後、傷の経過を見てもらいに病院を訪れました。包帯の下からは血が滲んでいます。
年配の看護婦さんが包帯を外し、ちょっと席を外した間に、また出血が始まったのです。
その血を見た途端に意識が遠くなり、半ば失神状態でした。血圧が80しかなかったとか。
そのため担架に乗せられ点滴室に直行。一時間ほど点滴を受け、やっと病院から開放されました。

傷跡は今でも薄っすらと残っています。皆さんもくれぐれもお気を付けください。

今思い返せば、この頃は明らかな躁状態で、好きな車を乗り回すなど生活そのものが楽しかったものです。
反面、外出先で突然気を失うなど薬の副作用に苦しめられた時期でもありました。
そのおかげで怪我が絶えず、眉毛の下を縫ったり目の下を強かに打ったり、特に顔が傷だらけだったのを
思い出します。

教訓:人生はあざなえる縄の如し

チャンチャン^^

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             惨劇の原因となったビリケン商会ウルトラマンBタイプ