パットマンⅩの 遊星より愛をこめて

桑田のユニフォーム姿、良いね!

記憶より記録

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ジャイアンツの戦いぶりが情けないので、古の良き時代を懐かしんでいます。
長嶋と王。人気、実力ともに日本プロ野球史上最高のコンビ。しかし彼らの現役時代は、明らかに長嶋人気が勝っていました。ファンの人気だけでなく、マスコミのそれも。

分からなくもありません。長嶋はプロ野球を上回る人気を誇っていた六大学の花形選手であり、巨人入団後も初年度から大活躍。石原裕次郎と並び称される程の国民的大スターとなります。甲子園の優勝投手とはいえ、入団後3年間は鳴かず飛ばずだった王とは、スタートの時点で大きな差がありました。

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”長嶋人気”という名の化け物を、誰よりも実感していたのが王だったでしょう。打っても打っても、世間の評価は長嶋がナンバー1。スポーツ新聞の売れ行きも、王が1面の場合と長嶋が1面の場合とでは倍近くの差を付けられます。今でもはっきり覚えていますが、TV中継である解説者が「打者としては、王よりも長嶋の方が上だと思いますね」と、平然と語っていました。これがV9当時の世の中一般の見方だったのです。

昭和46年、長嶋は6度目の首位打者に輝きましたが、王は本塁打王打点王の二冠。しかし、記者投票によるMVPに選ばれたのは長嶋。晩年を迎えつつあった長嶋への温情による投票だったであろうことは容易に察しが付きました。王はさぞかし悔しかったでしょう。

私は王の大ファンでした。王が活躍した時の新聞は必ずスクラップしていましたね。そんな、当時小学生の私でも、世の中が長嶋贔屓なのは肌で感じていました。だから、長嶋は好きじゃなかった。何よりも気になったのが「長嶋はここぞという場面で打つが、王は勝負に弱い」という風評。なので、チャンスで長嶋に打席が回ると「打つなよ、打つなよ~」と上島竜兵ばりに念じたものですwww そんな時、長嶋は必ずと言って良いほど打ちました。長嶋の勝負強さは本物だったんです。

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二人の対照的な性格も、人気の差に拍車をかけたんでしょう。人一倍お茶目な長嶋と、人一倍生真面目な王。ゴルフ界でも、中嶋常幸よりジャンボ尾崎の方が人気があったように、”天性のスター”には誰も敵わないということでしょうね。「記憶の長嶋 記録の王」と、暗に「記録は凄いが印象は薄い」とまで評される始末。

長嶋>王の図式は、長嶋引退後も続きます。「王が長嶋を超えたのは長嶋の晩年」と決め付けられ、王が通算本塁打数でハンク・アーロンを超えても、新聞紙上では”ホームランを打つだけの王”と揶揄されます。この侮辱的な言葉が掲載されたのは、こともあろうに読売新聞のスポーツ欄です。巨人の親会社である読売の記者ですら、この程度の認識だったのです。

思えば、王はホームランのイメージが強過ぎて損をしていました。対する長嶋は「川上哲治の後を継ぐ打撃王」のイメージでしょうか。王も5回も首位打者になっているんですけどね・・・。

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時は流れ、平成も27年。長嶋・王の現役時代を知る世代は、社会の第一線から退きつつあります。そんな中、二人のプレーを観たことがない四十代以下のファンが目にする”とんでもない”王の記録。NPB歴代通算1位の記録を列挙すると・・・。

本塁打 868(長嶋 444 14位)
・打点 2170(長嶋 1522 7位)
・得点 1967(長嶋 1270 12位)
・塁打 5862(長嶋 4369 7位)
・四球 2390(長嶋 969 16位)
・敬遠 427(長嶋 205 3位)
出塁率 .446(長嶋 .379 23位)
長打率 .634(長嶋 .540 11位)
OPS 1.080(長嶋 .919 順位は不明 誰か調べてくださいwww)

長嶋は大卒、王は高卒の違いこそあれ、そのあまりの隔たりに「王は凄い。それに比べて長嶋は、う~ん・・・」となることは想像に難くありません。今後10年、20年と時間が経つにつれ、その傾向はより顕著になるでしょう。
実際に観た人と、観ていない人との違い。プロ野球選手の評価は、結局は記録で決まるんですね。しかも長嶋と王は同時代に同じチームで活躍したのですから、投手のレベルや球場の広さの違いを云々する必要もありません。

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王は圧倒的な記録を残すことによって、長嶋を超えることが出来たのです。言い換えると、圧倒的な記録を残さなければ、決して長嶋を抜くことは出来なかった。王が現役時代どうしても越えられなかった長嶋の”人気の壁”は、現役引退後35年にして漸くなくなりつつあります。

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それは、選手としての記録だけでなく、監督としてホークスを強豪チームに育て上げたこと、WBCでの優勝、現在の球団会長としての手腕など、複数の要素が混ざり合った結果でしょう。ただ、繰り返しになりますが、有無を言わせぬ打者としての記録が”記憶を留めない後世の人たち”によって正当に評価されていることが、何よりの援護射撃になっているのではないかと思うのです。


(注)
一方の雄、長嶋を貶める意図は微塵もないので誤解しないでねσ(^_^;) 長嶋の凄さは、この目にしっかりと焼き付いていますヨ。

長嶋について詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。